小学生の算数で、難しいと言われている単元の一つが「割合」です。パーセントや、割引といった言葉に慣れていて、そういう言葉を出すとすんなり受け入れる子も、中にはいますが、実際は多くの子が理解に苦しんでいます。そして教える側としても悩ましい部分があります。もっと本質を理解して欲しいけど、そこまで踏み込むと混乱を招くかもしれない…比べられる量ともとにする量という用語の説明が…と苦悩している先生もいらっしゃることでしょう。今回はそんな割合についての考え方を、ひとつを紹介します。
割合とは
そもそも割合とは「2つの量の違いを表した数」です。2つの量のうち、基準とする方を「もとにする量」、もう一方を「比べられる量」(もしくは比べる量)と言い、比べられる量はもとにする量のどれくらいの割合なのか、ということを考えるのが算数における割合の基本です。そして割合を求めるために、「比べられる量÷もとにする量=割合」という公式をおぼえさせられるわけですが、果たして、これをそのまま正しく理解できている子どもは、どれくらいいるのでしょうか。教科書でもこれを用いて問題を解くよう示唆されていますが、結局、もとにする量も比べられる量も、割合が何かもよくわかっていない子がほとんどです。とりあえずはじめは、公式などは気にせず、まずは、割合が「2つの数量の違いを表している」ということを押さえておくと良いでしょう。
もとにする量と比べられる量
「ある本を昨日は8ページ、今日は40ページ読みました。今日読んだページ数は昨日読んだページ数の何倍ですか」という問題があったとします。昨日の8ページと今日の40ページ、どちらが比べられる量でどちらがもとにする量なのか、言葉の意味を通して判断することはかなり難しいと思います。
結局、問題文の「今日読んだページ数は」なら、「は」が付いてるから比べる量、「昨日読んだページ数の」は「の」が付いてるからもとにする量、と判断している子がたくさんいます。また、数を順番に式に当てはめているだけの子もいます。つまり「〇は△の何倍か?」と問われたら、何も考えずに「〇÷△」という式を計算しているのです。これでは、ただ問題文の見た目から式を作っているに過ぎないので、割合というものが理解できていないのです。
倍数の理解から割合へ
小学校では、割合の前に倍数について学習しています。倍数は割合そのものなので、まずは倍数をしっかりと理解することから始めるべきです。2倍、3倍、4倍…というのは何を表しているのかを、はっきり理解する。そのためにまずするべきことは、倍数を含む文を、かけ算に直せるようにすることです。例えば次のような質問で、式と答えをすぐに言えるように練習してください。
- 10円の2倍は? → 10×2 = 20円
- 10円の3倍は? → 10×3 = 30円
- 10円の4倍は? → 10×4 = 40円
上記のように、倍数が含まれた文をかけ算の式で表せるようにしてから、「倍数はかける数」ということをしっかり認識させるのです。これがきちんと理解できると「割合=倍数=かける数」という、割合の正体が掴めます。
割合をかけ算で考える
それでは例題です。「8の〇倍は40」の〇を考えてみましょう。
先ほど説明した倍数がわかっている人は「8×〇=40」という式をすぐに作れるはずです。この〇の数は何?と聞くと、多くの子どもが答えられると思います。九九を思い出しても、40÷8を計算してもいいですが、〇の数は5とわかります。そしてこのとき、かけた数の5が割合、8がもとにする量、積の40が比べられる量になります。「もとにする量×割合=比べられる量」ということを理解できると、割合における「もとにする量」という言葉も、少し合点がいくのではないでしょうか。
「8の〇倍は40」を割合の公式で「40÷8=〇」と考えるより、「8×〇=40」と考える方が、問題文と式が直結しており、きちんと理解できるのではないでしょうか。わり算は答えに直結しますが、かけ算の方が、割合を理解しやすい形かと思います。

問題文から式を立てる
割合の問題は、文章題になると少し難しくなります。
実は上記の式は、先ほどの「ある本を昨日は8ページ、今日は40ページ読みました。今日読んだページ数は昨日読んだページ数の何倍ですか」という問題の答えです。この問題文から式を作るように言うと、「40×〇=8」という式を作る子も出てきますが、これは誤りです。次のように文章通りに式を作ると、正しい式ができるはずです。
- 今日読んだページ数は昨日読んだページ数の何倍?
- 40は8の〇倍
- 40=8×〇
このように考えれば、かけ算の式ができるはずです。あとは「8×〇=40」に変えてもいいですし、そのまま〇を求めても構いません。とにかく「8の〇倍」で「8×〇」という、かけ算の部分を押さえれば、どのような問題文でも正しい式を作れるはずです。
百分率と歩合
割合がしっかり理解できれば、百分率と歩合は苦労しないはずです。まずは1という割合について考えてみましょう。かけ算で1をかけても、もとの数値は変化しません。つまり1という割合は、比べている2つの数が等しいことを表しています。この1という割合が、百分率では100%、歩合では10割と表しているのです。これらは日常で見かける表現なので、そういった例を持ち出すと、子どもの理解も早いかもしれません。丸暗記でもいいのですが、日常経験と結びつけることができると、一気に理解が深まることがあります。一番良い例が、「定価の70%」とか「2割引き」などというお金の計算で、算数の問題にもそのまま採用されています。
