子どもはなぜ勉強しなければいけないのか

子どもはなぜ勉強しなければいけないのか

たくさんの子どもが思っているであろう疑問。それが、「なぜ勉強しなければいけないの?」というものです。大人の方も、子どもの頃に思っていたかもしれませんし、大人になっても答えが見つかってないかもしれません。教員免許を持ち、学校や塾で教師の経験がある私なりの答えを述べたいと思います。これがかならずしも正しい答えだとは限りませんが、勉強を教えてきた人間の、1つの考えとしてお読みください。

勉強しなければいけない3つの理由

個人的に、子どもが勉強しなければいけない理由は以下の3つだと思います。

①生活の知識を得るため

②学歴を持つため

③思考するため

私は子どもに説明するときに、端的に、知識、学歴、思考の3つのためと話すこともあります。

生活の知識を得るために勉強する

生活の知識を得るために勉強する、という理由は誰もが納得するでしょう。国語は日本語の学習であり、日本で人と関わり合うためには、日本語の知識やそれを扱う能力が必要不可欠です。英語は世界中で用いられている言語であり、グローバル化が進む中で、重要度が高まってきました。算数は数の学問ですが、人々の生活は様々な数字で溢れかえっており、数を扱う知識は必須です。理科は生物、地学、化学、物理と、地球で生きる上で大切な知識を学び、社会は歴史と地理を学ぶ、つまり人々が歩んできた世界の記録と、現在の世界の状況を知るということです。このように、国語、算数、英語、理科、社会という5教科は、人間が地球という星で生きていく上で、重要な知識を得るための学問なのです。

学歴を持つために勉強する

はっきり言って、学歴はあまり重要ではないかもしれません。高学歴でも意味がない、必要ないという声もけっこう耳にします。しかし、学歴を持っていて損をすることより、得をすることの方が多いことは間違いありません。「東京大学出身です。」と言われたら、多くの人が一目置くのではないでしょうか。テレビタレントでも、高学歴の肩書きで、引っ張りだこの方もいます。もちろん肩書きだけでなく、実際の人物が評価されているとは思いますが、やはり高学歴であるということは、一定の困難を達成したということでもあり、みんなそこに惹かれてしまうのです。そして何と言っても、学歴は勉強の成果です。万人が経験した勉強というものの成果なので、誰もがその難しさや、努力を感じることができるのです。また、就職においても採用基準の1つになっており、学歴で判断すべきではないと賛否両論ありますが、社会経験のない人を雇用する場合、学業で一定の成果を出したということは、評価してしかるべきなのではないでしょうか。とにかく、良い大学を卒業しておいて損はないはずです。

思考するために勉強する

「算数ができないとお金の計算もできないよ。」と言うと、子どもはよく「じゃあ因数分解は将来何に使うの?」と聞いてくることがあります。算数を勉強する理由はわかるけど、数学を勉強する理由がわからないというのです。確かに因数分解を大人になって使っている人はほとんどいないでしょう。こういう単元をなぜ学習するかというと、思考するためです。特に数学は論理的思考を行うのに適した教科で、「5教科の中で最も重要なのは数学だ。」と仰る先生はたくさんいます。数学に限らず、多くの勉強には思考を伴います。これが非常に重要なのです。人間は考える生物です。考えて、よりよい生活を創り出し、幸福を得ます。言い換えれば、社会や自分自身を幸せにするために、考える力が必要なのです。子どもは勉強を通じて様々なことを考え、思考力を育てることに大きな意味があります。かつて、私が初めて勤めた塾で、尊敬する理科のベテラン講師が言った言葉があります。

「私は理科を教えてるのではない。」

何も知らない当時の私は意味が分かりませんでした。理科の先生が理科を教えてないってどういうことだ、と思いました。その先生は、大手塾で理科の教科責任者を務めた経験もあり、入試作成に携わったこともある、素晴らしい実績と実力を持つ先生でした。後からその真意を伺うと、「理科で考えさせているんだ。」というようなことを仰っていました。今は、その意味がわかるような気がします。

勉強する理由は子どもにはどうでもいい?

「なぜ勉強しなければいけないのか」という疑問を持っていても、実際質問してくる子はほとんどいません。勉強する理由をそれほど気にしていなかったり、理由がどうであれ、勉強しなければいけないという事実は変わらないと考えている子どももいます。勉強するために学校に通うということは、彼らにとって当たり前の日常なので、勉強する理由を必要としないのです。そういった子に勉強する理由を説いても、響かないこともあるので、積極的に理由について語る必要はないかもしれません。

勉強は自分の可能性を広げる

勉強する3つの理由を述べてきましたが、場合によっては一言で表すこともあります。それは、「自分の可能性を広げるため」です。知識も学歴も思考力も、結局自分のためです。少しでも多くの知識を知っておくことで、少しでも高い学歴であることで、考える力を持っていることで、より自分の可能性が広がり、自分の将来につながる可能性があります。使わない知識沢山あるでしょう。学歴も無意味になるかもしれません。いくら考えても結果が変わらないこともあるはずです。しかし、たった1つの知識を知っていたことで、命が助かる未来があるかもしれません。学歴があることで、運命の人と出会うことがあるかもしれません。考えていたアイデアが大成功して起業できるかもしれません。勉強している時はわかりませんが、将来の可能性を広げていることは間違いありません。

Connecting The Dots

スティーブ・ジョブズのスピーチで、"Connecting the dots."(点と点を繋げる)という有名な一節があります。最後に、ビジネスで大成功を収めた彼の言葉を紹介します。

You can’t connect the dots looking forward;
you can only connect them looking backwards.
So you have to trust that the dots will somehow connect in your future.

Steve Jobs

未来を見て点と点を繋ぐことはできない。

過去を振り返ることでだけ、点を繋ぐことができるのです。

だから将来、点と点が繋がると信じるしかない。